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症例報告

燃え尽き症候群と鍼治療

平成30128

松本 剛典

燃え尽き症候群と鍼治療

・はじめに

みなさんバーンアウト(燃え尽き)という言葉をご承知だとは思います。真面目に仕事をしていた人が急に元気がなくなる、仕事を休む、仕事を辞めるなど本人にも周りにも大きな影響を与える事例があります。

ストレス、精神的な過重などが主に原因とされていますが鍼治療による身体症状の改善が有効かどうか、取り扱った症例を通して考察してみました。

今回は少し欲張ってスポーツ選手のオーバートレーニング症候群に対しても考察してみました。

 

・バーンアウトについて

バーンアウトシンドローム/ burnout syndrome / 燃え尽き症候群 /

それまでひとつの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなること。

それまで意欲を持ってひとつのことに没頭していた人が、あたかも燃え尽きたかのように意欲をなくし、社会的に適応できなくなってしまう状態のことをいいます。

絶え間ない過度のストレスにより発生し、うつ病の一種とも考えられています。朝起きられない・職場に行きたくない・アルコールの量が増える・イライラが募るなどの症状がみられ、仕事が手につかなくなったり対人関係を避けるようになります。病気に対する抵抗力も低下し、人生に対して悲観的になることから、家庭生活の崩壊や最悪の場合には自殺や過労死に至ることもあります。

「バーンアウトシンドローム」は精神心理学者のハーバート・フロイデンバーガーが1974年代に初めて用いた造語で、日本語では「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。その後、社会心理学者クリスティーナ・マスラークが「情緒的消耗感・脱人格化・個人的達成感の低下」から重傷度を判定する(MBI: Maslach Burnout Inventory)を考案しました。

元々は医療や福祉・教師などの対人サービス業に従事する人に多いとされてきましたが、現在ではさまざまな職種・業種に見られます。またスポーツの分野でもオーバートレーニング症候群などの慢性疲労状態と密接な関係があると考えられています。

 

e-ヘルスネット 厚生労働省 生活習慣予防の為に健康情報提供サイトより   

・バーンアウトの症例報告

症例1

氏名    Mさん

年齢    52歳

性別    女性

職業    教員

初診    平成23年5月23日

主訴    夜眠れない 倦怠感 食欲不振 

普段から忙しく仕事をしていたが新しい内容の仕事が加わり時間の余裕がなくなった。

1ヶ月くらい前から1日2・3時間程度しか眠れなくなった。疲労が取れない状態。

数日前から仕事を休んでいる。病院で検査した結果は慢性疲労状態と診断。

治療            睡眠時間を伸ばす目的 食欲の改善 をはかるために背部から頚肩部・後頭部までの刺鍼を行う。

使用鍼  ステンレス 0.16×40mm

刺鍼深度 5・6mmまで

 

経過            週2回程度の治療で6月末まで10回治療。6月末から復職。その後、週1回くらいの治療で継続。秋の時点で新しい課題は解決。翌年の6・7月研究授業なども行えた。平成28年3月に早期退職後は家族の介護をしている。現在は治療間隔が延び、1ヶ月に1回程度で治療継続。

触診所見の変化 

当初は浅背筋群・起立筋など強く緊張していた。浅い部分から緊張を取り除いていき徐々に刺鍼深度は深くなっていった。後頭部にうっ血状の触診所見あり。頚肩部の処置を進むにしたがって、触診所見は改善。

 

症例2

氏名    Mさん

年齢    78歳

性別    女性

初診    平成29年12月6日

主訴    腰から背中にかけて痛み。歩けなくなった。疲れて物が食べられなくなった。

身体は少し肥満気味。筋力は年齢相当以上。

既往    糖尿病

年初めにご主人が病気をして入院。看病をしていた。10月退院後自宅での看病を続けていたが12月2日に動けなくなった。

治療    介助しないとベッドに上がれなかった。

右腰背部の緊張が強かった為0.16×40mmを使い腰背部に刺鍼。起立筋の外縁から外側に強い緊張があった為に呼吸も浅くなっていた。

触診所見が変化した後にTh6〜7脊柱棘突起側の強い筋緊張を取り除いた。(そこが痛みの原因だと思われる。)

 

使用鍼  0.16×40mm

刺鍼深度 15mmまで 

*12月8日 介助なしで歩いて入って来られた。食欲も回復。腰背部に残っていた筋緊張を処置した。

 

 

・考察

バーンアウトの症例は基本的には精神的な負担を取り除く事である。ただ、鍼の治療室として診断のあるなしに関わらず対応を求められるときがある。

・症例1 

患者・家族共に動けなくなったことを承知しておられた。医療機関で受診後の来院。治療回数のかかることを承知してもらいながらの処置となった。

・症例2

バーンアウトのなり始めの対応であったと思う。

 

・バーンアウトの症例に留意するポイント

1 患者さんの取り組んできたことを肯定する事。

2 鍼の治療で自覚症状を好転させる事。

3 休むことの大切さを理解してもらう事。

4 継続的な治療を行うことで効果の得られることを理解してもらう事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・オーバートレーニング症候群について

オーバートレーニング症候群/ 慢性疲労症候群 /

スポーツなどによって生じた生理的な疲労が十分に回復しないまま積み重なって引き起こされる慢性疲労状態。

スポーツの実施などによって生じる生理的な疲労が、十分に回復しないまま積み重なって起こる慢性疲労状態のことを指します。

 

スポーツトレーニングは、日常の身体活動のレベルより大きな負荷の運動をすることによってトレーニング効果が得られるという原則があります。これを過負荷の原則(オーバーロード・トレーニング)といいますが、大きな過負荷を続けると同時に、疲労回復に必要な栄養と休養が不十分であった場合には、かえって競技の成績やトレーニングの効果が低下してしまいます。このような状態をオーバートレーニング症候群といいます。

 

競技成績の低下だけでなく、疲れやすくなる・全身の倦怠感や睡眠障害・食欲不振・体重の減少・集中力の欠如・安静時の心拍数や血圧の上昇・運動後に安静時の血圧に戻る時間が遅くなるなどの症状がみられます。

特に疲労症状が高まるにつれて起床時の心拍数が増加するといわれており、オーバートレーニング症候群を早期発見する目安となります。心理的プロフィールテスト(POMS)・心理的競技能力診断検査(DIPCA3)・体協競技意欲検査(TSMI)のような心理テストもチェック方法として有効と考えられています。

 

原因は肉体的・精神的ストレスにより、視床下部や脳下垂体から分泌されるホルモンのバランスが崩れるためと考えられ、重症になるほどトレーニングの減量・中止期間が延び、競技復帰が不可能になることもありますので早期に発見し対応することが必要です。

 

e-ヘルスネット 厚生労働省 生活習慣予防の為に健康情報提供サイトより

 

 

・オーバートレーニング症候群の症例報告

症例1

氏名 Oさん

性別 女性

年齢 50歳

*トライアスロン選手

初診 なし

施術日 9月1日

主訴 眠い 食欲がない 練習に集中出来ない

現症状 腰から背中の筋肉の張りが強い

治療 9月17日の世界選手権(エイジ50)の出場が決まっているが練習が出来ない状態になった。練習したい意識が強いのだが、どうにもならなかった。調べてみるが大きな故障はない。腰部から背部(起立筋中心)の緊張を取り除いた。

使用鍼 0.16×40mm

*9月8日 食欲は戻った。眠さは続いている。処置は変わらない。

*9月12日 泳げるようになり走れるようになった。処置は変わらない。

 

・考察 

このケースは特殊なケースです。20年前の世界選手権直前にも同じ症状が出ていました。昨年の世界選手権の直前にも同じような症状が出ていました。

練習でギリギリまで追い込むことが出来る選手は競技力の高い優秀な選手です。ただし、本症例のようにオーバートレーニング症候群の発症が懸念されます。大切な試合までの日数を考えながら治療計画を立てます。

 

・オーバートレーニング症候群の留意するポイント

1 故障の有無の確認をする事。

2 練習状況の確認をする事。

3 パフォーマンスを上げるために練習量を落とす事を相談する事。

4 鍼治療の効果を実感してもらう事。

 

まとめ

一般的にバーンアウト(燃え尽き)症候群は心理的・精神的な要素を中心としてとらえられる。鍼治療による身体症状の軽減が、症状全体(心理的症状・身体的症状)に改善をもたらすことが確認できました。かなり重症化したものにも時間はかかりますが有効であると思われます。

類似のオーバートレーニング症候群に対しても同様な結果が得られています。症例数を重ねてこの結果をより確かなものとしたく思います。

 















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