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症例報告

眩暈の診療


眩暈の診療

 

米子信愛鍼治療院 

松本 剛典  

 

 

 眩暈の診療にすぐ役立つ資料がみつかりましたのでみなさんとの学びに活用したいと思います。

  「知っておきたい循環器病あれこれ30 めまいと循環器病」

   発行者 公益財団法人 循環器病研究振興財団

URLhttp://www.ncvc.go.jp/cvdinfo/pamphlet/general/pamph30.html#anchor

 「知っておきたい循環器病あれこれ」は、「公益財団法人 循環器病研究振興財団」が循環器病に関する最新情報を分かりやすく解説した発行物を、国立循環器病研究センターが許可を得てHTML化したものです。(200211日)

 ※図と絵は一部省略・簡略化しています。

 

■ はじめに

 めまいに悩んでいる人は、皆さんの周りを見渡しても少なくないはずで、心筋梗塞や脳卒中になる人よりも多いといわれています。

 患者さんがこれほど多いのに、なぜか医学界ではあまり重要視されず、めまいを克服するための積極的な研究や対策もほとんど行われてきませんでした。その理由の一つは多くの医師が「めまいは耳の病気で、放っておいても死ぬようなことはない」と軽く考えているからのようです。

 患者さんにとって深刻でうっとうしい症状ですが、耳鼻科では「異常ありません」といわれる場合が多く、「なんとかしてほしい」と病院を転々とする人が少なくありません。実は、めまいはさまざまな原因で起こる症候の総称で、耳鼻科だけですべてが解決するような病気ではないのです。

 めまいはある部分では、循環器病と密接に関係していることをよく知っておいてほしいのです。

 

めまいに二つのタイプ

 <表1>のようにめまいは、大きく分けて二つのタイプがあります。一つは、自分自身がグルグル回っているように感じる「回転性めまい」で、水平方向に回転しているように感じる場合が大半です。エレベーターに乗ったときのように、すーっと下がっていく感じを訴える患者さんもいますが、これは垂直方向への回転性めまいと考えられています。もう一つは「フラフラする」か「グラグラする」タイプの「非回転性めまい」です。

 どちらのめまいであっても、同時に吐き気、嘔吐があることも少なくありません。吐き気や嘔吐はめまいにつきものの症状なのです。

 専門的には回転性めまいを『めまい』、非回転性めまいを『めまい感』と呼んで、両方を区別しています。しかし『めまい』と『めまい感』では混乱し、話がわかりにくくなるおそれがあります。そこでここでは、めまいを「回転性めまい」、めまい感の方を「フラフラ感」と呼ぶことにします。

 回転性めまいは、突然起こって、ある一定期間だけ持続し、その後はまったく消えてしまうのが普通です。

 一方、フラフラ感には、回転性めまいと同じように突然起こり一定期間だけ続いた後に完全に消えるタイプと、いつの間にかフラフラするようになって、それが何か月も、何年も続くタイプがあります。

 ですから、めまいはその起こり方と持続の仕方によって、「突発性一過性のめまい(回転性めまい、フラフラ感)と「慢性持続性のめまい(フラフラ感)」の二種類に分けることもできます。

 

 表1 めまいの種類

種 類

起こり方と持続期間

回転性めまい

突発性で一定期間だけ

フラフラ感

突発性で一定期間だけ慢性で持続性









 

どこの病気で起こる?

 めまいは一体どこの病気なのでしょう?めまいの起こる仕組みはかなり複雑で、耳、眼、首、脳などいろいろな部位の異常が関係している場合があります。

 めまいを理解するには、まず人が頭の位置や、身体の向きをどうやって認識しているかを知る必要があります。なぜなら、頭や身体の位置を認知する機構の一部が障害された結果、起こる症状がめまいだからです。

 人の身体には<図1>をご覧いただくとわかるように、頭や身体の位置を確かめる極めて精巧な仕組みが備わっています。このおかげで、自分の頭や身体がどういう方向を向いているかを知ることができるのです。

 この仕組みの最前線で働いているのが眼、耳、手足などの末梢感覚器です。これらの感覚器はそれぞれが得た情報を脳に伝えます。脳に送られてきた多くの情報はすべて最高機関である平衡中枢に送られ、ここで「自分の頭や身体はいま、どの方向を向いているか」を最終的に判断します。

 普通、眼や耳、首、手足から送られてくる情報は完全に一致しています。例えば、水平な地面に立っている人が首を45度ぐらい右に傾けて、前方の絵画を鑑賞しているとしましょう。

 眼は「いま頭が45度ぐらい右に傾いている」という視覚情報を平衡中枢に伝えます。左右の耳からも同様な情報が送られます。首の筋肉も「首は45度ぐらい右に傾いている」という情報を平衡中枢に伝えます。すべての情報が一致していますから、平衡中枢は戸惑うことなく「自分はいま首を45度ぐらい右に傾けている」と認識することができるのです。

 しかし、末梢感覚器からの情報が一致しない場合は、どうなるでしょうか?例えば、歩行中に急に回れ右をしたとき、右の耳はこれを察知して「いま右に回転した」という情報を脳に送り、一方、左の耳は異常があって、回転したことをキャッチできず、「いや、回転していない」という情報を送ったとします。平衡中枢は末梢感覚器から異なった情報が送られてくるので、それをどう処理してよいかわからず、結果としてグルグル回転しているかのように判断してしまうのです。それがめまいです。

 

 図1 頭や身体の位置の認知機構

原因はいろいろ

 頭や身体の位置関係をキャッチする認知機構のどこか一部に異常が生じ、うまく働かないと、回転性めまいやフラフラ感が起こる可能性があります。

 めまいの原因になり得るのは<表2>に示したように、耳、眼、首に異常がある場合、血圧が下がりすぎた場合、うつ状態、脳に異常がある場合などです。

1.耳の異常から

1)めまいはなぜ起こるのか?

 耳の奥には内耳という部分があり、その中の前庭と呼ばれる場所に「三半規管」という装置<図2>があります。三半規管には、三つの輪のようになった管がついていて、管の中は液体(リンパ液)で満たされています。

 液体は普通は静止していますが、頭を左右に振ったり、首を前後に動かしたりすると、その反対方向に動きます。この液体の動きで内耳は頭がどの方向に動いたかを察知し、その情報を脳に送ります。こうした内耳の働きで眼をつぶっていても、身体がどの方向に向いたかがわかるのです。

 それでは、どちらか一方の内耳に異常が起きた場合はどうなるでしょうか?

例えば、右の三半規管の管の一つにゴミのようなものがたまったとします。頭をある方向に動かした時に、左の三半規管の液体はそれと反対方向に動いて「いま頭はこちらの方向に動いた」という情報を伝えます。

 ところが、右の三半規管の一つはゴミがたまっているために液体は動きませんから「いや、頭は動いていない」と、間違った情報を送ります。

 平衡中枢は左右の耳からの情報の違いを処理できずに混乱し、回転性めまいを起こすのです。このような左右の耳からの情報の違いは、頭が動いているときだけ生じますから、頭の動きが止まり、三半規管内の液体が静止状態になると、情報の食い違いはなくなり、めまいも治まります。つまり、この場合のめまいは頭部が動いているときだけ起こり、動きが止まると間もなく消失するはずです。

 これが「耳性めまい」の一つである「良性発作性頭位性めまい」の起こる仕組みです。

2)めまいを起こす耳の病気二種類

 めまいを起こす耳鼻科の病気はいろいろありますが、大きく分けて二種類あります。一つは、めまいと同時に耳鳴りが起きて耳が聞こえにくくなるタイプで、突発性難聴やメニエール症候群などが代表的なものです。もう一つは、めまいだけが起こり聴力には異常をきたさないタイプで、良性発作性頭位性めまい、前庭神経炎などが代表例です。

 耳の異常によるめまいは、原因がどれであってもほとんど例外なく回転性めまいを生じ、突然始まります。

 回転性めまいで病院に行ったら「血圧が190/100mgHgぐらいあります」などと、血圧が異常に高いことを指摘されるはずです。そのため、すぐに降圧剤の服用を勧める医師もいますが、血圧を下げてもめまいはよくなりません。なぜなら、血圧が高いから起きたのではなく、めまいが起きて驚いてしまい、結果的に血圧が上がっているだけだからです。

 回転性めまいは、頭部をある方向に向けていると起きますが、別の方向に向けているとまず起きません。また、頭部を急激に動かすとめまいがするのに、ゆっくり動かせば起きにくいのが普通です。このタイプのめまいに慣れている人は、めまいが起こりにくい方向を向いてじっと横たわり、動くときは用心深くゆっくり動くようにしています。そうすれば、めまいをかなり回避することができます。

 耳鼻科疾患によるめまいは早ければ1日以内、長くても1〜2か月ぐらいで消えてしまう場合がほとんどです。

 

  表2 めまいの原因となる疾患

  ● 耳疾患(耳性めまい)

  ● 視力異常(眼性めまい)

  ● 頚部筋緊張異常(頚性めまい)

  ● 過度の血圧下降(降圧)

  ● うつ状態

  ● 小脳・脳幹疾患

  ● 大脳疾患

  

2.眼の異常から

 眼の異常によるめまいは多くはありませんが、起こるのは確かです。

 両方の眼に白内障があり、一方の眼の手術をした患者さんがいました。手術後しばらくの間、眼帯をかけたまま過ごし、いよいよ眼帯を外すときがきました。眼科医が眼帯を外すと、その途端、グルグル回るめまいが起こりました。目を閉じていると起こらないのに、目を開けているとめまいがします。

 「そのうち治りますよ」といわれて退院しましたが、いつまでたっても同じ状態が続きました。サングラスをかけ、少し見えにくい状態にしておくと、めまいが起こりにくいことがわかり、手術後1年以上たった現在も、この方はサングラスをかけて生活しています。

 眼の異常が原因のめまいは、左右の視力が大きく異なる場合に起こりやすいようです。眼鏡が合わなくなったために起きることもありますから、なかなか治らない場合は眼鏡や視力をチェックする必要があります。

 

3.首の異常から

 首の筋肉の緊張が強い人で、とくに左右どちらかの側の筋緊張がより強いとき、めまいが起こることがあります。首の筋緊張によるめまいの多くはフラフラ感ですが、回転性の要素が加わっている場合もあります。

 このフラフラ感はいつの間にか起こり始め、長期間続くのが一般的です。首の筋肉は肩や頭とつながっていますから、首の筋緊張は肩や頭の筋肉も緊張していることを意味します。肩の筋肉の緊張は「肩こり」、頭の筋肉の緊張は「頭痛」「頭が重い」という症状になって現れます。

 ですから、首の筋緊張異常によるフラフラ感の人は「頭が重い」という症状を訴えることが少なくありません。「フラフラするし、頭が重いから、脳に異常があるのではないか」と悩んでいる人が案外多いのです。

 しかし、このタイプのフラフラ感や頭重感は、診断がつけば治療は比較的簡単で、ほとんどが筋緊張を和らげる薬によって数日のうちに消失します。

 

4.血圧が下がりすぎて

 血圧が高いのを心配しても、血圧の下がりすぎを心配する人は案外少ないようです。しかし、下がりすぎは上がりすぎと同じくらい怖いのです。

 血圧が200/100mmHgぐらいに上がって2〜3時間しても、普通の人はケロッとしていて痛くもかゆくもないはずです。ところが血圧が50/20mmHg程度に下がり、それが2、3分続けば、気を失うか、フラフラして立っていられなくなるでしょう。普段より大幅に血圧が低下したとき、最初に出る症状はフラフラ感です。

 血圧は、心臓から出た血液を全身に運ぶのに必要な圧力ですから、血圧が低くなりすぎると臓器に流れる血流量が減ってしまいます。

 脳には自動調節能と呼ばれる安全装置が備わっていて、少しぐらい血圧が下がっても脳へ流れる血流量が減らない仕組みになっています。しかし、血圧があまりにも低くなると、脳の血流量が減って脳が酸欠状態になり、平衡中枢がうまく働かなくなって、結果としてフラフラ感が出現するわけです。

 立ちくらみは、起立性低血圧などによって脳血流量が一時的に減るために起こる瞬間的なめまいです。降圧薬をのみすぎて血圧が異常に低くなってもフラフラ感が起こります。高血圧症で降圧薬を服用中の患者さんが「最近どうもフラフラする」といって来院した場合、血圧の下がりすぎが原因であることが少なくありません。こうした患者さんでは服用中の降圧薬をやめたり、大幅に減らしたりするか、ほかの薬に変更すると、フラフラ感が数日でよくなります。

 

5.うつ状態になって

 中年以上の人の4人か5人に1人はうつ状態という報告もあるほど、うつ状態はよくみられます。注意してほしいのは、精神的な抑うつ症状はほとんどなく、身体症状が前面に現れる「仮面うつ病」のときです。めまいは、不眠、頭重感と並び、仮面うつ病の三大症状です。そのめまいは大抵フラフラ感で、不眠と密接な関係があることが少なくありません。

 うつ状態によるめまいには、抗不安薬や軽い抗うつ薬が有効で不眠もめまいも改善されます。だから「フラフラ感は睡眠不足のせいだ」と思われがちですが、うつ状態のときどんな仕組みでフラフラ感が生じるかはまだ詳しくはわかっていません。

 

6.脳に異常が起きて

 脳の病気のためにめまいが突然起こることは、あまり多くはありませんが、起こるとしたら、ほとんど例外なく小脳や脳幹の脳卒中(脳出血か脳梗塞)によるものです。その場合、めまい以外の脳の症状を伴うのが普通で、例えば片側の手足が動きにくい、半身の感覚がおかしい、物が二重に見える、ロレツがまわらない、頭が痛い、意識がもうろうとする・・・などの症状がいくつか現れます。

 脳幹、小脳の脳卒中で起こるめまいの6070%はフラフラ感、3040%が回転性めまいで、どちらも吐き気や嘔吐を伴う場合がほとんどです。これに脳の症状があれば、脳卒中であることは容易に診断がつきます。あやしいと思ったら脳卒中の専門医のいる病院で受診してください。

突然、めまいが起こったとき

 ある日、突然、回転性めまいやフラフラ感が起こった場合、その原因はなんでしょうか?

 私たちは、突然、めまいが起こり緊急入院した患者さんのうち、耳鳴り、難聴、吐き気、嘔吐などはあっても、脳の症状のなかった約100人の患者さんに詳しい検査(脳のCTMRIを含む)をして、その原因を調べました。結果は<図3>の通りで、原因の81%は耳鼻科の病気でした。

 どの患者さんも麻痺などの脳の症状は訴えなかったのに、12%に脳梗塞が見つかりました。その脳梗塞はいずれも非常に小さくて、CTでは検出できず、MRIの拡散強調画像という方法でやっと検出できる大きさでした。<図4>

 これらの脳梗塞の大半は、入院から退院時まで症状はめまいだけで、他の脳の症状は現れませんでした。

 このように、めまいだけのように思えても、実は脳梗塞のある場合があるのです。脳梗塞が非常に小さくて、めまいの症状しか出ないので見逃されているケースも少なくありません。

 私たちが調査した約100人は、脳梗塞の可能性をかなり疑って入院してもらった方が大半です。その中の12%しか脳梗塞がなかったわけですから、突発めまいを起こした人全員を対象にすれば、脳梗塞がみつかる頻度はかなり下がり、2、3%程度になるであろうと推定しています。

 めまいだけの脳梗塞は一般に小さくて軽症で、見逃されても大事に至らない場合がほとんどですが、時には、めまいで始まり、後で意識障害や手足のまひを伴う重症の脳卒中の例もありますから要注意です。

 最近、私たちの病院に運ばれてきた69歳の女性は、最初は回転性のめまいだけで発症しました。翌日、左耳が聞こえにくくなったので耳鼻科に行くと突発性難聴といわれ、自宅で様子をみていたところ、3日後の朝、意識を失って倒れ、救急車で運ばれました。入院時は意識障害のほか手足のまひや、さまざまな脳の症状が見られ、CT検査では小脳、脳幹に広範囲にわたり脳梗塞が起きていることがわかりました。

 このようなケースもありますから、めまいが突然起きたときは、一度は脳卒中の専門医に診てもらった方が安全です。

    

 

こんな めまいが要注意!

では、どんなめまいが怖くて要注意なのでしょうか。怖いめまいとそうでないめまいを区 別するのは、非常に難しいのですが、突然めまいが起きて、同時に「ロレツがまわらない」「手足に力が入りにくい」「ものが二重に見える」「感覚がおかしい」などの症状があれば、脳卒中の可能性が大ですから、すぐに脳卒中の専門医のいる病院へ行ってください。

 いま挙げたような症状がなくても「いままでなかったフラフラ感が突然起きた」「めまいだけでなく頭痛や頭重感が続く」「頭がボンヤリする」「吐き気や嘔吐が強い」という場合は、やはり脳卒中専門医に診てもらっておくことが大切です。

 

■ 耳性めまいは怖い病気ではないが・・・

 突然めまいを訴えて緊急入院した患者さんのめまいの原因の大半が耳鼻科の病気だったことは、すでに説明しました。この患者さんたちのめまいは間もなくきれいに消失しました。

 では、この患者さんたちに「めまいは耳の異常のせいで一時的なものでしたから、もう心配はいりません」といってよいのでしょうか。この点を明らかにするため、耳性めまいの患者さんを対象に詳しい検査をしました。すると、三つの事実が浮かび上がりました。

 第一は<図5>のように、耳性めまい患者の66%が高血圧症、27%が糖尿病、50%が高脂血症、39%が心臓病だったことです。こうした頻度は、脳卒中の人たちの合併症の頻度とよく似ています。

 第二は、既往歴を調べてみると、32%が過去に脳梗塞や脳出血を起こしていたことです。第三はこれらの耳性めまいの人たちを1〜3年間追跡調査をすると、期間内に12%が脳梗塞を起こしたことです。

 三つの事実は、耳性めまいと脳卒中の間に密接な関係があることを示しています。耳性めまいの原因は主に「良性発作性頭位性めまい」「前庭神経炎」「突発性難聴」「メニエール症候群」などですが、これらは一般に循環器病ではないと考えられています。ただし、これらの病気の原因がはっきりしているとは言い難く、その背景に血液の循環障害が関係している可能性は否定できません。

 興味深いことに、耳性めまいの治療にもっともよく使われるのは循環改善薬で、実際に有効な場合が多いのです。

 内耳に血液を供給している動脈は、脳(小脳、脳幹)に血液を運ぶ動脈から枝分かれしたものです。その上流である脳底動脈に動脈硬化性の病変があったと仮定してみましょう。そういう人では、ある時には脳卒中が、別の時には内耳に異常が生じてめまいが起きても不思議ではありません。

 耳性めまい自体は恐ろしい病気ではありませんが、このめまいが起きたら「脳卒中の警告サインかもしれない」と受け止め、脳の検査をしておく方が無難だといえます。

 

 

治療が難しい慢性フラフラ感

 フラフラ感に悩むお年寄りは極めて多く、米国の調査によると65歳以上の人の30%がフラフラ感を訴えるそうです。

 こうしたお年寄りにいろいろな検査をしても、大きな異常が見つかることはまれです。何度病院に出かけても「気のせいですよ」とか「心配いりませんよ」と真剣に取り合ってもらえないことが多いのです。

 フラフラ感を訴えるお年寄りを診察すると、足の力が弱いわけでなく、歩く姿もふらついているようには見えない場合が大半です。脳のCTMRIを撮影しても、多くは年齢相応の変化が見られるにすぎません。それでも、ふらつくという自覚症状があるのが、この病気の特徴で、本人は「怖くて歩けない。なんとかしてほしい」と訴えることが少なくありません。厄介なことに、フラフラ感は放置すると何年も続いたり、やがて寝たきりになったり、ぼけたりするケースもあります。

 お年寄りのフラフラ感ほど仕組みがわからない病気はないと言えるほどで、診断・治療は困難です。しかし、一部の患者さんは首の筋肉の緊張異常、血圧の下がりすぎ、うつ状態が原因となっていますから、それらを治療すれば、フラフラ感が軽くなるか消失する可能性があります。

 最近、私たちは「脳磁図」という特殊な検査機器を使って研究し、フラフラ感の一部は、てんかんのように脳の異常興奮によって起こることを突き止め、現在、治療法を検討中です。研究がさらに進めば、お年寄りのフラフラ感の診断・治療法が大きく前進するのではないかと期待しています。

 めまいはさまざまな原因によって起こることがおわかりいただけたと思います。とくに、めまいが起こる過程で循環器病が大きな役割を果たしている点を理解していただければ幸いです。めまいが起きたら、単に耳だけの病気とは思わず、高血圧症、糖尿病、高脂血症、心臓病、脳卒中との関係を調べてもらうことをお勧めします。

症 例

 

症例1

 Mさん 女性 42

施術日:平成121014

主訴:眩暈

症状:午後2時半過ぎ回転性の眩暈(吐き気を伴う)が起こる。歩行困難。四肢の麻痺はなし。確認時間が(2時50分)5時30分にもう1度確認。

治療:午後7時30分右前頚部から耳下リンパ節耳前リンパ節の腫れを取り除く。右肩上部〜後頚部側頚部後頭部の緊張を取り除く。

使用鍼:ステンレス鍼の1号鍼 

治療時間:40分 治療直後に介助してトイレに連れていく。

所見:鳥取県西部地震後に眠りにくい状態が続いていた。少し風邪気味であった。麻痺がないこと・耳鳴り・難聴がないことから急性の前庭神経炎の可能性を考えた。

 10月の15日眩暈は消失していたが前日と同じ治療を繰り返し行った。症状は消失し日常生活に戻った。

 

症例2

 Sさん 男性 73

初診日:平成23年8月23

主訴:起立性低血圧 (5か月間フラフラする感じが続いている)

既往症:糖尿病 眼底出血 

症状:長年糖尿病を患っている。インシュリンを投与。血糖降下剤を使用。内科耳鼻科とうで受診するが検査結果は異状なし。時々急なふらつき感を覚える。車の運転がしにくい。

治療:背中から肩頸までが強い緊張状態になっている。症状の左右差は感じられなかった。起立筋を中心に背部から後頚部・後頭部までの緊張をとるような鍼を行った。

使用鍼:ステンレス鍼の1号鍼

第2診 8月29

第3診 9月5日

第4診 9月14

第5診 9月22

 回を重ねるごとに起立筋の緊張が解消される。9月5日の来院時には自身で車を運転して来院。

 9月22日の来院時にはほぼ症状が消失。

 眩暈の治療の可能性を考え始めるきっかけとなった症例です。平衡感覚の失調を中枢の問題としてだけとらえるわけでなく末梢の処置の治療効果を再認識させられました。

 

症例3

 Mさん 男性 45

初診日:令和2年9月30

主訴:眩暈

症状:2、3日前から症状があり今朝から著しくふわふわした眩暈があり、立ち上がれない感覚があった。

治療:左肩上部・後頚部・背部・側頚部の緊張を緩める。

使用鍼:ステンレス鍼の1号鍼

 ノートパソコンをのぞき込まないようにすると良いというアドバイスを送る。2日後に来院された際にふらつき感が消失したのを確認。

 

まとめ

 眩暈は平衡感覚の失調ととらえることが出来る。平衡感覚は受容器・感覚神経・平衡中枢が正常に働くことによって成り立っている。どの要素に不調があるか、その要素ごとに不調が変わってくる。感覚受容器に原因がある眩暈を簡単なものと考えてはならないと思う。かなりのものが医療機関で原因不明で治す方法がないものととらえられているのではないか。

 鍼治療を行うことで症状改善につなげられるものはかなりの比率であると思われる。













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