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症例報告

睡眠障害と鍼治療

睡眠障害と鍼治療

米子信愛鍼治療院 

増本 有哉

 

はじめに

日本では、5人に1人が不眠症状で悩んでいると言われています。

治療院でも睡眠について何らかの問題を抱えている患者さんを診ることは少なくないと思います。そのような方が鍼治療を行っている時に気持ちよさそうに眠られていることを経験する事があります。睡眠障害の原因は様々ですが鍼治療で有効であった症例を発表したいと思います。NHKのニュースによればコロナウイルスの感染拡大で5人に1人が睡眠の質が悪化したと感じているという報道がありました。今後鍼治療の重要度が増すのではないかと思いこのテーマを選びました。

 

睡眠障害について

●概要

 厚生労働省が行った平成23年の国民健康・栄養調査を行っていますが、「ここ1ヶ月間、あなたは寝床に入っても、寝付きが悪い、途中で目が覚める、朝早く目覚める、熟睡できないなど、眠れないことがありましたか」といった問いに対して、眠れないことが頻繁にあった者の割合は、男性13.2%、女性13.6%という高値に達しました。また、厚生労働省による別の報告では、一般成人のうち約21%が不眠に悩んでおり、約15%が日中の眠気を自覚しているとの調査結果も提示されております。このように睡眠の困難を抱えている方はかなりいるわけですが、その睡眠の問題を症状別に簡単に解説していきます。

 まずは、いわゆる不眠症と呼ばれるものです。不眠症の症状は表に示したように4つのタイプがあります。これらの不眠症状を引き起こす原因は、例えば急性ストレスによる一過性のもの、身体疾患(掻痒感、腰痛などの慢性疼痛など)によるもの、薬剤の副作用によるもの、あるいは生活習慣により引き起こされたものなど様々であり、その原因、修飾因子によって対応は異なってきます。これら不眠症の中で注意しなくてはならないものがうつ病などの精神疾患の症状として出現する不眠です。うつ病において典型的な不眠のパターンは、早朝覚醒、中途覚醒であり、一過性ではなく持続性のものです。これらの不眠(および身体疾患により引き起こされた不眠)に対しては、原因となる疾患に対する治療が原則となります。

 

●不眠症の症状

1 入眠障害 布団に入ってもなかなか寝つけない

2 中途覚醒 夜中に何度も目覚めてしまい、その後なかなか寝付けない

3 早朝覚醒 朝早く目覚めてしまい、再度眠ることができない

4 熟眠障害 ぐっすり眠ったという感じが乏しい、眠りが浅い

 

 一方、不眠とは逆の方向性のものとしては過眠があります。日中眠くて居眠りをしてしまう、長時間眠ってしまい起きることができない、などといったものです。これらは、脳の疾患によるものだったり、日中に発作的に睡眠相に入ってしまうナルコレプシーという病気、あるいは夜間の不眠を原因とする日中の過眠、など様々なものが含まれており、これらを鑑別することが重要になります。うつ病においても、不眠ではなく過眠が出現することがあります。

 不眠、過眠といった典型的な睡眠の障害以外にも、前述した時差ぼけや睡眠時間帯が遅い時間帯に固定してしまう睡眠相後退症候群などの概日リズム睡眠障害、睡眠中に無呼吸が生じ、そのため夜間不眠、日中の眠気が引き起こされる睡眠時無呼吸症候群などがあります。

 一口に睡眠障害といっても様々なものが含まれていますので、安易に自己判断を下さずに、心配な場合は専門医に相談することをお勧めします。

保健のしおり vol.42 東北大学保健管理センター

 

検査・診断

睡眠障害の原因はさまざまなので、詳細な問診を行うことで具体的に「どのような睡眠障害なのか」をきくことが重要です。それらを通して不眠症であるのか、過眠症であるのか、概日リズム睡眠障害であるのか、それとも身体疾患や精神疾患に関連したものであるのかを推定することになります。

 

問診のみで特別な検査を追加しないこともありますが、場合によっては睡眠ポリグラフ検査やHLA遺伝子型検査、脳脊髄液検査など必要な検査を組み合わせることもあります。

 

治療

睡眠障害の治療はまず、背景因子を調整することが大切です。過度の疲れやストレス、アルコール、カフェインなどが原因となって睡眠障害を来すこともあるため、これらにうまく対処することが重要です。また、毎朝一定の時間に起きる、適度に日光を浴びる、運動をするなど規則正しい生活スタイルを確立することも大切です。これらは「睡眠障害の対応と治療のガイドライン」において、睡眠障害対処12の指針(睡眠衛生指導)としてまとめられています。

 

睡眠障害の治療は原因に応じてさまざまであるため、原因の特定が大切です。睡眠障害のタイプに応じて内服薬(睡眠薬に限らず、中枢神経刺激薬や抗うつ薬などが使用されることもあります)が処方されます。従来のベンゾジアゼピン系睡眠薬は習慣性や過量服薬の懸念から保険診療において処方数などが制限されています。近年はオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬が中心となっています。

睡眠障害 メディカルノート

 

《睡眠障害対処 12 の指針》

@ 睡眠時間はそれぞれ、日中の眠気で困らなければ十分

・ 眠気の長い人、短い人、季節でも変化、8 時間にこだわらない

・ 年をとると必要な睡眠時間は短くなる

A 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法

・ 就床前 4 時間のカフェイン摂取、就床前 1 時間の喫煙は避ける

・ 軽い読書、音楽、ぬるめの入浴、香り、筋弛緩トレーニング

B 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない

・ 眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝付きを悪くする

C 同じ時刻に毎日起床

・ 早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる

・ 日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる

D 光の利用でよい睡眠

・ 目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン

・ 夜は明るすぎない照明を

E 規則正しい 3 度の食事、規則的な運動習慣

・ 朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く

・ 運動習慣は熟眠を促進

F 昼寝をするなら、15 時前の 2030

・ 長い昼寝はかえってぼんやりのもと

・ 夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響

G 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに

・ 寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る

H 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意

・ 背景に睡眠の病気、専門治療が必要

I 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に

・ 長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障ばある場合は専門医に相談

・ 車の運転に注意

J 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと

・ 睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる

K 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全

・ 一定時刻に服用し就床

・ アルコールとの併用をしない

厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費

睡眠障害の対応と治療ガイドライン作成とその実証的研究班

 

症例

氏名 Aさん

性別 女

年齢 66

職業 事務職

初診 令和2420

主訴 不眠(寝つきが悪い)

昨年の1月頃から寝つきが悪くなり病院で睡眠導入剤を貰って飲み始めた。1度ホルモン療法を試したけど副作用がでたので止めた。昨年の7月から専門医の所で睡眠の状態に合わせて睡眠導入剤を処方してもらっている。

症状 2230分には寝床につく。30分前に導入剤を飲む。23時頃眠る。3時頃に1回起きる。630分に目覚ましをセットしてあり起きる。

   現在薬は2種類服用している。1種類だと途中で起きて寝つきが悪いため。睡眠導入剤20mg服用。

身体所見 後頚部の緊張強い。左右差があり左側の方が緊張強い。自覚なし。

治療 背部起立筋〜後頚部の緊張を緩める

始めはぐっすり眠れて日中すっきり過ごせると熟眠感を得られるように治療していく。

使用鍼 0.14×40mm 0.16×40mm

 

治療 

1回目 4.20

2回目 4.23

*前回治療後、22時頃に少し眠気を感じた。

3回目 4.28

*朝起床するまでぐっすり眠れている自覚がでてきた。治療中眠くなる。

4回目 5.7

1週間睡眠薬の量減らした。問題なく眠りにつくことができた。日中は眠気なく過ごせる。どうしても眠たい時は午後30分横になる。

5回目 5.14

6回目 5.21

7回目 5.28

1週間睡眠薬の量15rで眠れた。

8回目 6.5

*治療後3日間は睡眠薬10rで眠れた。

9回目 6.11

*この1週間は睡眠薬20rでないと眠れなかった。

10回目 6.18

11回目 6.25

12回目 7.3

*1週間睡眠薬15mgで眠れることができた。

13回目 7.9

5日間睡眠薬10mgで眠れることができた。

14回目 7.16

15回目 7.22

16回目 7.30

17回目 8.6

1週間睡眠薬10mgで眠れている。

18回目 8.11

19回目 8.20

20回目 8.26

21回目 9.2

*治療した日は睡眠薬15rで眠る。翌日からは20rでないと眠れない。

22回目 9.10

*睡眠薬20mgでないと眠れなかった。

*今週は台風8・9号が接近した。

23回目 9.17

 

経過 

治療を重ねていくことで背部から後頭部の緊張が緩む。脊柱起立筋の左右のバランスが整う。睡眠薬を使用する量は、ばらつきがあった。途中で起きることはあるがその後眠れなくなることはない。治療をしてから朝起きてから寝足りないと感じることは少なくなり日中も眠気を感じることはない。 

 

考察

今回の症例では入眠障害以外随伴する症状はありませんでした。睡眠剤は専門医の診察を受けて処方されているので副作用の心配はありませんでした。季節の変わり目、気温や天候の状態によっても眠りづらくなることがあります。睡眠の質が良くなって熟睡度が良くなったことで入眠時の眠気も起こるようになって睡眠薬の量も減らして眠れることが増えました。ただ睡眠薬の量だけを目安に治療の経過を診ていくのではなく睡眠の熟眠感を得られ翌日スッキリと起きられる状態が増えることを指標にみると不眠の症状改善につながると思います。

入眠障害がある方にとって今日も寝つけないのではと不安になることあることがあります。それによって寝床に入ってから余計に頭がさえて寝つきが悪くなる傾向があります。

眠れないときは、入眠時間にこだわらず無理に寝床に入って寝ようとせず読書をしたりラジオを聴いたりと自分にとってリラックスできることをしてみた方がその後の熟眠感が増えると思います。その点を踏まえながら聞き取りを行い治療することで寝つきが悪い症状がもう少し変化したかもしれません。

 

まとめ                    

個人差・性別・年齢・季節と様々な要因によって睡眠時間は変化してきます。最も健康によい睡眠時間についての絶対的な基準はないと思います。睡眠時間にこだわらず睡眠の熟眠感が得られて日中すっきりと過ごせて疲労が蓄積しないような状態が良い睡眠だと思います。

冒頭でも触れたように睡眠について悩みをもった方が5人に1人いるといわれています。新型コロナウイルスの流行があり環境の変化などによって睡眠障害を抱える方が増加するかもしれません。鍼治療を行うことで身体的な症状・精神的な緊張の緩和をもたらすことで睡眠の質が良くなり身体の回復力も高まっていきます。睡眠に対しての鍼治療でのニーズが高まっていくよう有効性を高めていきたいと思います。

 


















米子信愛鍼治療院

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