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薬剤の使用過多による頭痛に対する鍼治療の一症例
米子信愛鍼治療院
増本 有哉
【はじめに】
頭痛は現代社会において非常に身近な症状で、多くの人が経験しています。中でもデスクワークの増加に伴い、肩こりから頭痛を引き起こすケースが増えています。このような頭痛に対して、多くの方が市販の頭痛薬や処方薬で対処されていますが、頭痛薬の使いすぎによって、かえって頭痛が悪化してしまう薬物乱用頭痛(Medication Overuse Headache: MOH)という状態が問題となっています。
MOHとは、頭痛薬を1ヶ月に10日以上または15日使用する状態が3ヶ月以上続き、もともとあった頭痛が悪化している状態を指します。頭痛が起きることへの不安から、予防的に薬を飲んでしまう、効果が弱くなってきたと感じて量を増やしてしまうなど、知らず知らずのうちに薬への依存度が高まってしまうことがあります。
本症例では、慢性頭痛に対する頭痛薬の過剰使用によりMOHを併発した患者に対し、鍼治療を実施し、頭痛症状の改善と薬剤使用量の減少を認めたため報告します。
【症例】
患者:27歳 女性
職業:事務(デスクワーク)
初診日:令和5年12月29日
治療日:令和6年7月19日
主訴:肩こり、頭痛
現病歴
慢性的な肩こりを背景に頭痛を発症。頭痛予防のため市販薬を連日使用していたが、徐々に薬効が低下し、服用量が増加した。医療機関を受診し、頭痛薬の使用を控えるよう指導されるも、症状コントロールが困難な状態が続いていた。
【経過】
治療前の状態
・頭痛薬を連日服用
・頭痛発作の頻度増加(ほぼ毎日)
・休日に頭痛が起きて我慢してみるも嘔吐する。
1回目治療(R6.7.19)
使用鍼:ステンレス鍼(0.14mmX40mm、0.16mmX40mm)
刺鍼部位:両側頚肩背部
触診所見:背部起立筋・僧帽筋上部線維・板状筋・後頭下筋群の筋緊張
2回目治療(R6.8.23)
・初回治療後2週間は頭痛薬不要
・その後、頭痛の再発はあるものの、服薬頻度は週3回程度に減少
・頭痛の強度も軽減
【考察】
1. 薬物乱用頭痛の要因分析
- デスクワークによる姿勢性の問題
- 予防的な頭痛薬使用による悪循環(頭痛に対する不安からの服薬)
2. 鍼治療の効果
- 筋緊張の緩和
- 頭痛の頻度・強度の減少
- 薬物使用量の減少
- 薬物離脱期の症状管理に有効
3. 治療メカニズムの考察
- 頚肩部の筋緊張緩和
- 自律神経系の調整
- 疼痛閾値の変化
- 頭痛発作の予防効果
【頭痛薬を減らすための鍼治療の役割】
頭痛薬の使用を控えめにしたいと思っても、「頭痛が起きたらどうしよう」という不安から、なかなか薬を減らせない方が多くいます。特に、頭痛薬を長期間使用していると、薬の効果が徐々に弱くなり、使用量が増えていくという悪循環に陥りやすい状況があります。
このような状態から頭痛薬を減らそうとすると、以下のような問題が起こることがあります
- 頭痛が一時的に強くなる
- 吐き気や気分の悪さが出る
- 頭痛が続く不安で日常生活に支障が出る
本症例では、このような状況に対して鍼治療を行うことで、以下のような効果が得られました
1. 即効性のある痛み軽減
- 治療直後から首や肩の張りが和らぐ
- 頭痛の強さが弱まる
- 吐き気などの不快な症状も改善
2. 段階的な薬の減少をサポート
- 鍼治療で痛みを抑えながら、少しずつ薬を減らすことが可能に
- 頭痛が出そうな時の予防的な治療
- 頭痛発作時の対処法として鍼治療を活用
3. 実際の治療効果
- 初回の鍼治療後、2週間は頭痛薬が必要ないほど症状が改善
- その後も頭痛薬の使用が「ほぼ毎日」から「週3回程度」に減少
- 頭痛の強さ自体も和らいだ
4. 生活の質の改善
- 薬に頼り過ぎない生活が可能に
- 頭痛への不安が軽減
- 仕事や日常生活への支障が減少
このように、鍼治療は頭痛薬を減らしていく過程で起こる症状を和らげ、徐々に薬から離れていくためのサポート役として効果的でした。特に、治療効果を実感できることで、「薬を減らすことへの不安」が軽減され、結果として薬の使用量を減らすことができました。
ただし、頭痛薬の使用を急に中止することは危険な場合もありますので、必ず主治医と相談しながら、徐々に減らしていくことが重要です。鍼治療は、その過程をよりスムーズにするための治療として活用することができます。
【まとめ】
薬物乱用頭痛に対する治療の基本は、原因となる薬剤の中止である。しかし、薬剤離脱時には頭痛の一時的な増悪や随伴症状の出現により、治療の継続に難渋することが多い。本症例では、この薬剤離脱期に鍼治療を併用することで、離脱症状の緩和と頭痛の改善が得られた。
医療機関での治療と鍼治療の併用は、薬物乱用頭痛からの離脱をよりスムーズにし、症状改善までの期間短縮に有効である可能性が示唆された。今後は長期的な経過観察と、症例の蓄積が必要である。
参考文献:一般社団法人 日本頭痛学会HP
【コラム】
これまで、Medication-overuse headacheは、国際頭痛分類第2版日本語版の訳で「薬物乱用頭痛」を採用し、広く一般的に使用されるようになりましたが、一方で、「薬物乱用」という言葉が非合法の薬物の乱用を連想させるとして、不利益や誤解が生じる恐れがあることから、変更が望ましいのではないかという意見がありました。そこで、国際頭痛分類第3版では、「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」に変更となっています。
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