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症例報告

腱鞘炎に対する鍼治療

腱鞘炎に対する鍼治療

米子信愛鍼治療院 
森脇安浩

 

はじめに

症状の改善が難しくなっている腱鞘炎の症例を治療する機会が続けてあった。

どうしたら改善するのか考えながら治療する中で対象部位によって鍼の扱い方や治療の組み立てなど改めて見直すことで症状が改善した有効症例について報告する。

 

腱鞘炎とは

「ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)」

母指(親指)を広げると手首(手関節)の母指側の部分に腱が張って皮下に2本の線が浮かび上がります。ドケルバン病はその母指側の線である短母指伸筋腱と長母指外転筋が手首の背側にある手背第一コンパートメントを通るところに生じる腱鞘炎です。

症状

手首(手関節)の母指側にある腱鞘(手背第一コンパートメント)とそこを通過する腱に炎症が起こった状態で、腱鞘の部分で腱の動きがスムーズでなくなり、手首の母指側が痛み、腫れます。母指を広げたり、動かしたりするとこの場所に強い疼痛が走ります。

注:短母指伸筋腱は主の母指の第2関節を伸ばす働きをする腱の1つです。
  長母指外転筋腱は主に母指を広げる働きをする腱の1つです。

症状

@短母指伸筋腱(たんぼししんきんけん)
 主に母指を伸ばす働きをする腱の一本です。
A長母指外転筋腱(ちょうぼしがいてんきんけん)
 主に母指を広げる働きをする腱の一本です。
B腱鞘(けんしょう)
 @とAの腱が通るトンネルです。

 

 

原因と病態

原因

妊娠出産期の女性や更年期の女性に多く生じます。手の使いすぎやスポーツや指を良く使う仕事の人にも多いのが特徴です。

病態

母指の使いすぎによる負荷のため、腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、さらにそれが刺激し、悪循環が生じると考えられています。
特に手背第1コンパートメント内には、上記の2種類の腱を分けて通過させる隔壁が存在し、これがあるために狭窄が生じやすいです。

病態

診断

上記の部位に腫脹や圧痛があり、母指と一緒に手首を小指側に曲げると痛みがいっそう強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト変法)。
正しくは母指を写真のように小指側に牽引したときに痛みが強くなることで診断します(フィンケルシュタインテスト)。

フィンケルシュタインテスト変法 フィンケルシュタインテスト変法

フィンケルシュタインテスト フィンケルシュタインテスト

自分で調べるには手首を直角に曲げ母指を伸ばしたときに疼痛が増強するか否かで判定します(岩原・野末のサイン)。

 

 

治療

局所の安静(シーネ固定も含む)、投薬、腱鞘内ステロイド注射(特にトリアムシノロンは有効)などの保存的療法を行います。
改善しないときや再発を繰り返す場合は、腱鞘の鞘を開く手術(腱鞘切開)を行います。その際、隔壁の切除と橈骨神経浅枝の愛護的操作が求められます。

※日本整形外科学会ホームページより引用

症例報告

症例報告@ Aさん 慢性の腱鞘炎(ドケルバン病【狭窄性腱鞘炎】) 

年齢    50代 

性別    男性

職業    デスクワーク

初診日  令和2826

主訴    左母指動作時痛 

現病歴          令和24月から痛くなってきた。娘さんの引っ越しを手伝って重たいものを運んだりした。痛くなったり治まったりを繰り返している。ゴルフもするが最近していない。

症状            右第1指屈曲時、右第1指伸展位のまま右前腕回外時に痛みがある。

フィンケルシュタインテスト陽性

身体所見        左前腕前面・後面〜母指までが腫れている。

治療部位        左鎖骨下・上腕前面・前腕前面後面・前腕橈側・手関節橈側・母指周囲

3回目以降は鎖骨下・上腕前面はしていない。

全体を通して手関節周囲・腱鞘周囲を中心に治療していく。

治療 

1回目   8.26    *左前腕橈側〜母指くらいまでまだ腫れがある。

*左母指外転筋・短母指伸筋腱は0.14で鍼先を皮膚につける段階でも痛みを出してしまう時があった。       

2回目   8.29    *痛みに変化なし。

*左母指外転筋と短母指伸筋腱の緊張が変化してくると、左橈骨茎状突起周囲の腫れが引き始めた。
*治療終了後は痛みが軽減した。

 

3回目   9.5     *左手関節を動かした時にピキッと痛みを感じた後に母指の症状が軽減するようになってきた。

*左前腕から母指までの腫れも少なくなり、痛みも変化してきたので治療部位を限定していく。

*左腕橈骨筋の緊張が緩むと左母指外転筋と短母指伸筋腱に沿って触診していく時に腱鞘との交差部付近に部分的に腫れがあるので0.14で鍼先を触れさせておくように処置すると症状が軽減した。

4回目   9.12    *調子が良かったが8日から痛みが出てきた。

                *同様に処置。

5回目   9.19    *前回治療後からは痛み少なく動きも良かった。

                *現時点で左母指外転位・左手関節撓屈尺屈で痛みを感じる。

6回目   9.26    *左手関節撓屈尺屈時は痛くない。

*左前腕回外位で左母指外転するとガクンと母指が動くし痛い。

*左前腕を回外してもらい痛みの出る部位を確認しながら対象部位を

絞っていった。

7回目   10.3    *前回よりも左前腕回外時の左母指のガクンとなる回数が減り痛みも軽

減している。

*腱鞘周囲を中心に鍼の扱い方に注意しながら処置。

8回目   10.24   *痛みはなくなってきた。左前腕回外時に左母指を外転させても痛みも

動きも問題ない。

                *左母指外転時に少し違和感。

                *起床時に左長母指外転筋・短母指伸筋腱に張りを感じる。

9回目は1210日に腰痛の治療で来院。左母指の状態は良い。

 

症例報告A Bさん 急性の腱鞘炎 

年齢    20代

性別    女性 

職業 看護師 産休中 

初診日  令和2821

主訴    両手関節前面痛(左主) 左第345指が動かしにくい。

現病歴 820日の朝、左手関節屈曲がしにくくなり手指の屈曲もしにくい。

        1か月くらい前から左手関節が痛いときがあった。

症状    両手関節屈曲・伸展で痛み。特に左側の症状が強くて今朝は起きた時に左第345指が少し曲がった状態で固まっていた。左手関節前面に圧痛。

身体所見        前腕前面の緊張が強い。左手根部がやや熱をもって腫れている。

備考    産後2か月 子供さんは現在体重5s

    体格は痩せ型で手の太さも細め。

 

治療 

1回目   8.21    *左手関節前面は処置した後も痛みが残るので再度確認すると、

手関節前面の橈側手根屈筋腱と長掌筋腱の間で横手根靭帯やや

下縁を0.14で鍼先にかける力を少し軽めにして処置すると動き

も良くなり症状も軽減した。

2回目   8.24    *両側とも手関節と指が動かしにくい。

                *両手関節の痛み。

                *前回よりも手関節前面の腫れが引いてきている。

                *前腕前面を同じように処置していくと触診所見の変化が大きい。

 

3回目   8.28    *左手関節は朝だけ動作時痛があるが昼頃になると痛みがなくなってく

る。指の動かしにくいのも朝だけで昼に動かせるようになってきた。

*回を重ねるごとに前腕前面〜手関節前面の腫れや緊張が少なくなって

くる。

*腫れが少なくなっているので鍼の扱い方も変えながら、腱移行部や

腱に対して鍼先を触らせておくように処置すると症状が変わってきた。

1012日に来院されたときは腰痛の治療で手関節は痛くなくなっていた。

 

 

 

 

 

考察 

症例1 疲労がある中で引っ越し作業があり何度も重たい箱を運んだ事で手関節に負荷が加わったこと発症。痛みがある中、仕事でパソコンの入力作業、デスクワークで使い続けた。

症例2 筋力不足や初めての育児での疲労により手関節が赤ちゃんの体重増加に耐えきれなかったことで発症。違和感があったが育児で使い続けた。

どちらの症例も一時的に使用頻度が増えたことで発症。痛みがある中で使い続けなければならず段々と症状が強くなっていた。

鍼治療した事によって起こる対象部位の触診所見や症状の変化を捉え(特に2回目以降の変化)、状態に応じて鍼の扱い方や治療計画を対応していく事で、より良い結果につながったと考えられる。

 

 

まとめ

治療の経過から評価を重ねていき自覚症状の変化と対象部位の触診所見の変化を捉えていく事で症状の改善につながった。
症状の改善しにくい症例も今までの治療を見直し、自分のやり方を微調整することで、炎症が長引いている腱鞘炎に対して鍼治療で有効症例とする事ができた。













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