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平成29年1月22日
肋間神経痛の鍼治療
西山 明恵
はじめに
肋間神経痛の治療は初めての為、治療処方の指示をしてもらい、患者さんにも話を聞きながら対応させて頂きました。治療をする中で、患部(肋間)のみ処置するのではなく離れた部位(関連する部位)からのアプローチでより効果のある治療になると分かり驚きました。勉強になることが多く、良い治療結果も得られましたので今回発表させて頂くことになりました。
肋間神経痛について
肋間神経痛の原因
多くの場合は、原因が不明な特発性神経痛です。綿密に診察や検査を行っても、痛みを起こす病変が見つかりません。
ウイルス感染による帯状疱疹、腫瘍、肺ガン、胸膜炎、肺炎、カリエスなどにともなって発症することがあります。特に帯状疱疹の後によくみられます。このように原因がはっきりしている場合は、続発性神経痛といいます。
肋間神経痛の症状
脊椎から片側の肋骨下縁に沿って、発作性、反復性の痛みが起こります。鋭い痛みで、不規則な間隔で繰り返し起こりますが、長時間持続することはありません。
深呼吸、咳、大声などで痛みが誘発されるほか、身体を捻り肋間神経を伸ばすようにしても痛みが誘発されます。
肋間神経痛の診断
痛みの起こっている場所に発疹・帯状疱疹がないかどうかを調べます。
レントゲン写真で肋骨骨折、胸膜炎、胸水が溜まっているか、肺の腫瘍、肺の炎症、高度の変形性脊椎症、転移性腫瘍がないかどうかを検査します。
肋間神経に圧迫や炎症がないか詳しく診断するためには、CTやMRIなどの画像診断を行います。また、神経の電気的診断のために、筋電図検査も必要になります。
肋間神経痛の治療法
中心となる治療法は、薬物療法です。薬物療法があまり有効でない場合には、神経ブロック療法、外科療法が考慮されます。
(そらいろネット/家庭の医学より抜粋)
鍼治療(症例)
症例1 Tさん
性別 男性
職業 教師
年齢 42歳
初診日 H28.7/25
既往歴 H18 頚部外傷(交通事故)
主訴 両肋間神経痛(左側主体)
症状 3,4年前(H24)から右肋間神経痛が出始め、2年前(H26)から左肋間神経痛が出始めた。今は左側の痛みが強く右側は少し痛む。痛みの場所、度合いが日によって変わることもある。4,5日前から特に痛みが強くなっている。気候での変化はあまりない。疲労感で痛みが強くなることはある。MRIでは骨に異常は無かった。ヘルペスもない。
身体所見 胸骨点の痛み。(左:第8−10肋間、右:第9−11肋間)左背部は起立筋中央(Th8−10)の張りが強い。症状が強い時は肋間に沿って痛みがあった。
治療
1回目 H28.7/25
施術部位 左胸椎棘突起側(Th10−C7)
※鍼治療は初めて。主にステンレスの寸3の1番鍼を使用。
※院長の指示で左胸椎棘突起側(Th10−C7)のみ処置。下位側から上位側へ順次鍼を使う。1回目の治療で入れたい所までは入らない為深度は入れられるところまで入れる。
※深い所で20mm入った。ほぼ10mm〜15mm。
触診所見 表面の張りは緩んだが筋肉の緊張は変化しにくかった。
2回目 7/26
施術部位 同部位[院長 途中 左胸椎棘突起側ポイント3ヶ所(Th10−6)
深度25mm前後]
来院時までの経過 昨日に比べると痛みが軽くなる時があったがまだ同じ痛みが続いている。痛みの場所が度々変わる。(前胸部・側胸部・背部)
※深度をもう少し取らないといけなかった。
院長にポイントの処置をしてもらった後触診すると、浅い所から深い所まで触診所見が変化していて私の処置した後では気付けなかった細かな部分まで診ることが出来るようになっていた。
3回目 7/30
施術部位 同部位(院長 仕上げ)
来院時までの経過 前回治療後、だいぶ状態が良くなった。神経痛が少し弱くなっていて出たり出なかったりしている。継続して出てはいない。痛くない時間が増えた。右側の痛みは出ていない。左の前胸部・側胸部に出る。出る場所は変わる。
4回目 8/1
施術部位 同部位(院長 仕上げ)
来院時までの経過 だいぶ良くなってきている。痛くない時間が長くなってきた。左胸骨点と側胸点に感じ始めた。少し痛む場所が変化している。
5回目 8/9
施術部位 左側胸点(第3・4肋間ポイント)・前胸点(胸肋関節〜肋弓ポイント)
[院長 初め 左胸椎側(Th12−6)]
来院時までの経過 痛みが出ている時間が減ってきている。痛みの出る場所は同じ。
出張に行っている間は少し辛かった。
※今回から直接側胸点・前胸点の処置を追加した。初めに胸椎側の処置をしてもらっていた為側胸点・前胸点のシコリが見つけやすかった。鍼を当てるようにすると小さくなっていった。
6回目 8/12
施術部位 左背部(後鋸筋)残り 左側胸点・前胸点(院長 初め 左背部)
来院時までの経過 前回治療後から順調。痛みが減っている。
※直接左側胸点・前胸点の治療を追加してから更に状態良い。本人も自覚されている。
7回目 8/24
施術部位 左背部〜肩甲間部 左側胸点・前胸点
来院時までの経過 前回治療後から少し間が空いたが調子が良かった。疲れてくるとたまに痛みが出る時はあった。痛みは減っている。
※触診所見の鍼に対する反応が以前に比べると早く緩みやすい。
症例1の考察
※疲労による特発性神経痛で症状が出てからの経過が長い為慢性化した症例と思われる。
※鍼治療が初めてだった為に治療する場所を限定して行った。
※1回目の翌日に続けて治療に来て頂けた為3回目に受診された時にはだいぶ状態が改善していた。
※5回目の治療で側胸点・前胸点の治療を追加した後から更に痛みが軽減している。
※7回目では10日以上間隔が空いていたが状態良かった。
症例2 Hさん
性別 男
年齢 28歳
職業 自衛隊員
初診日 H25.6/29
主訴 右肋間神経痛
原因 銃剣道練習中に右胸部に打撃を受けた
症状 9/22に銃剣道練習中、右前胸部(第8−10肋間)に打撃を受けた。初めは打撃を受けた所の痛みだったがその後、右前胸部(第6−7肋間)に痛みが出るようになり、右背部(Th6−9)にも痛みが出始めた。全て同日に症状が出ている。
今は仰向けの状態で床やベッドに右手をついて起き上がる時、特に痛む。
病院は受診していない。
治療
1回目 H28.9/24
施術部位 右胸椎棘突起側(Th5−10) 追加 右前胸部(第6−8肋間)
※全てステンレスの寸3の1番鍼使用。
※右胸椎棘突起側治療後右背部の痛みは無くなったが、前胸部の痛みが強くなった為右前胸部(第6−8肋間)の治療を追加。
※背部の深度は10〜20mm。前胸部は2,3mm。
※少し痛みが残っているがベッドから起き上がれた為、初回の治療は終了。回数がかかることは伝えた。銃剣道の試験がある為、今回出来る限りの治療をした。9/26から1週間試験がある。最初の2日間は激しい動きになると伝えられた。
2回目 9/28
施術部位 同部位 追加 前胸点
来院時までの経過 前回治療後、痛みは少し和らいだがまだ前胸部の痛みが残っている。背部の痛みは無くなったが張りを感じる。試験は少し痛みが和らいでいた為なんとか動けた。これからしばらく試験はない。
※前回の治療で右胸椎棘突起側の深度が足りなかったが試験で動けるくらいには改善していた。
試験後の為、前回と同じくらい背部の張りは強くなっていた。表面の張りは戻っていたが緩むスピードは早くなっていた。触診所見も前回よりハッキリ分かるようになっていた。
3回目 10/6
施術部位 同部位 追加 側胸点
来院時までの経過 前回治療後から少しずつ痛みは軽減しているが、右手を上げて物を取ろうとした時や寝ていて起き上がる時に右側胸部に痛みが出るようになった。くしゃみした時には前胸部が痛くなる。
前回まで前胸部と背部の痛みが強かった為、側胸部の痛みが分からなかった。
触診所見 右肩甲骨内縁下部・肩甲骨下角〜側胸部にかけて張りが残っている。
※背部の治療が終わった所で確認してもらうと前胸部の痛みは目立たなくなったが側胸部の痛みはあまり変わらなかった。
※右側胸部を最後に追加。深度は2,3mm。
確認してもらうと少し痛みが和らいだ。もう少し回数はかかるがだんだん変化している。
症例2の考察
※外傷による続発性肋間神経痛の症例だと思われる。
※1回目の治療で出来る限り痛みを取り除く必要があった為、前胸部の治療を追加した。
試験では動けるくらいまで痛みを改善することが出来た。
※2回目の治療の時に側胸点に症状が出るかもしれないことを想定して治療が出来ていなかった。
考えて治療出来ていたら3回目の治療がより良い結果になっていたかもしれない。
(その他の症例)
米子信愛鍼治療院では続発性神経痛も取り扱うことがあります。例として、特発性気胸手術後の肋間神経痛、ヘルペス後の肋間神経痛などがあります。
反省点
*触診について
今回治療していく中で気を付けていたことは触診の仕方です。浅い所の所見と深い所の所見で見方が変わること、触り方でどのくらいの深度に所見があるか意識しました。肋間部は直接痛みを出している触診所見を探すのが細かくて最初は難しかったです。
*鍼の刺入深度
刺入深度も症例1の患者さんは鍼が初めてだったこともあり様子をみながら鍼をしていて躊躇したり遠慮していた為深度が足りなかったり時間配分が分からず焦って急いでしまう時がありました。治療直後や再診時の患者さんの様子が自分の思っている感覚と良くも悪くも違う時があり、次回の治療に繋げる為何が良かったのか、上手くいっていると思っていた治療のどこが悪かったのかその度考えるようになりました。
まとめ
肋間神経痛でもそれぞれの特徴を把握して対応していくことが大切だと分かりました。
例えば特発性神経痛では患者さんの生活環境などを詳しく聞いたり、続発性神経痛では手術後やヘルペス後、骨折や外傷など状態を細かく聞いていくことです。
初めは鍼先の感覚(触診所見の変化)がなかなかつかめなかったが回数を重ねる毎に分かるようになっていきました。それが自分だけの感覚ではなく、患者さんと一致するようになりました。
今回の治療経験を活かし、次の課題を見つけ患者さんの役に立てるようにしていきたいです。
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